輪ゴムと工業用ゴムってどう違うの?
はじめに
日常生活でよく見かける「輪ゴム」。郵便物を束ねたり、文房具として使ったりと、身近な存在ですよね。ところで、その輪ゴムを窓際にしばらく置いておいたら、カチカチに硬くなってちぎれてしまった…という経験はありませんか?実はこの現象、「輪ゴム」と「工業用ゴム」の大きな違いに関係しています。私たちが扱う工業用ゴム製品は、輪ゴムとは素材の構成も性能もまったく異なるのです。
この記事では、誰もが一度は目にしたことのある「輪ゴム」と、あまり一般には知られていない「工業用ゴム」との違いについて、できるだけわかりやすく解説します。工業用ゴム製品を取り扱う商社様はもちろん、ゴム素材に少しでも興味がある方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。
輪ゴムとは何か?
輪ゴムの主な原料は「天然ゴム(NR)」です。天然ゴムは、ゴムの木から採れるラテックスを原料に作られており、伸びが良く柔らかいのが特長です。コストも比較的安いため、日用品に広く使われています。
ただし、天然ゴムには以下のような弱点があります。
性質 | 評価 |
---|---|
耐候性(日光や紫外線への耐性) | ★☆☆☆☆ |
耐熱性 | ★★☆☆☆ |
耐油性 | ★☆☆☆☆ |
耐薬品性 | ★☆☆☆☆ |
日光に当たると劣化しやすく、オゾンや酸素によるひび割れが起こりやすいという欠点があるため、屋外や過酷な環境での使用には向いていません。輪ゴムがちぎれてしまうのは、まさにこの性質によるものです。
工業用ゴムとは何か?
一方、工業用ゴムとは、自動車部品、配管、電機製品、医療機器などに使用される高機能ゴムのことを指します。使用環境や求められる性能に応じて、素材や配合を最適化した製品が使われます。
代表的な工業用ゴムとその特性は以下の通りです。
材質 | 主な用途 | 特性の一例 |
---|---|---|
NBR (ニトリルゴム) | オイルシール、ガスケットなど | 耐油性◎、耐熱性◯ |
EPDM | 屋外パッキン、建材など | 耐候性◎、耐水性◎ 耐寒性◯ |
CR (クロロプレンゴム) | 防振ゴム、耐熱ホースなど | 耐候性◯、耐油性◯ 耐炎性◯ |
シリコンゴム | 医療・食品用パッキンなど | 耐熱性◎、耐寒性◎ 人体にやさしい |
フッ素ゴム (FKM) | 化学プラント、エンジン周りなど | 耐薬品性◎、耐熱性◎ 耐油性◎(高価) |
このように、工業用ゴムは使われる現場に合わせて「素材選び」が非常に重要です。「伸びる」「柔らかい」だけではない、多様な性能を持つ素材が揃っているのが、工業用ゴムの大きな魅力です。
なぜ輪ゴムと工業用ゴムはそんなに違うのか?
輪ゴムは、大量生産される日用品として「安価」「柔軟」「一時的な使用」を目的に作られているのに対し、工業用ゴムは「長期間の使用」「耐久性」「特殊な環境対応」が求められる製品です。また、加工方法や添加剤の配合も大きく異なります。例えば、紫外線に強くするための耐候性安定剤や、油に溶けないようにするための配合設計など、工業用ゴムは細かな調整が必要です。
まとめ
輪ゴムと工業用ゴムは、どちらも「ゴム製品」ではありますが、その役割も素材の性能もまったく異なります。輪ゴムは身近で使いやすい反面、耐久性には限界があります。一方、工業用ゴムは目的に応じた高性能な素材を選ぶことで、過酷な環境下でも安定して使える製品を実現できます。
工業用ゴム製品を扱うにあたり、「どの素材を選ぶか」は製品の品質や寿命に直結する重要なポイントです。「輪ゴム=ゴム」というイメージを超えて、ぜひ素材ごとの特性に注目してみてください。
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